大学の時、仲良しグループの一人が言った。
「ねぇ、スキー行かない?私の高校の時の仲が良かった男子も3人、行きたいって言うんだけど…いい?恋愛相談にも乗ってあげてよ」
急きょ決まった、スキー旅行。
バスで、ゲレンデの前のペンションに着くのは、明日の早朝。バスは満員。
思ったように身動きが取れないまま、朝、ペンション前に到着した。
その時、初めて、一緒に行く事になった男子に会った。私の友人と同じ高校だったということだった。
軽く、お互いの自己紹介をした。
1日目のスキーは、それぞれのペースで滑り、夕飯まで、顔を合わせることはなかった。
夕飯のあと、女子の部屋に集まり、親睦を深めることにした。
女子は、私を含めて、5人。男子は3人だった。
男子は、2人が大学生。1人が、社会人だった。
私は、ぼんやり頭の中で考えていたことは
「そういえば、お母さんが言ってたなぁ。
『大学卒業の人がいいよ。学歴が、自分より高いと、男の人は、嫌がるもんだよ…』うん、確か言ってた!」
普段から、ぽやぁ〜っとしてると、友人から突っ込まれる私は、その時も、友人に言われた。
「おぉ〜い、大丈夫ぅ?」
「あ、うん」
「疲れちゃったんじゃない?明日もあるから、今日は、もう、お開きにしよう」と言い出したのは、社会人の新ちゃんだった。
みんな部屋に戻り、私たちも布団をひいて、寝る準備を整えた。
「ねぇ、どの人がいいと思った?」などと、友だちがしゃべっていた。
しかし、私は、眠気に勝てず、一気に睡眠に落ちた。何も考えずに…
翌朝も快晴。文句なしのスキー日和である。
少し、筋肉痛もあったが、コツが掴めてきたところなので、滑りたい気持ちで一杯だった。
お昼ご飯を過ぎてSNSサイトにログインして暇を潰していたころ、ちょっとした事件があった。
博美が、スキー板を折ってしまい、「もう、スキーはやりたくない」と、部屋で泣いているというのだ。
女子は、博美にけががないことに安心しながらも、
「もう、やらない!みんなだけで楽しめばいいじゃん。」と布団をかぶって、駄々をこねている彼女に、辟易してしまった。
布団から出てこない彼女を残し、みんなで、ゲレンデに集まった。
「彼女、一人にしておくのかわいそうだから、今日は、早めに上がって、カラオケにでも、行こうよ。」と大田君が言った。
その時、隣にいた大学生の大田君は、私と身長が大して変わらない「かわいい男の子」という印象があった。
その日は、早めに上がり…までは、予定通りだったのだが、このあと、あんなことになるとは…。
スキー板を折ってしまった友だちは、食事もそこそこに、部屋に帰ってしまった。
私たちは、部屋に帰るのも、はばかられ、談話室で彼女の取った行動が子供っぽいだの、板ってレンタルだから…などと話をしていた。
すると、友だちが大急ぎで、やってきた。
「大変、新ちゃんと大田君が取っ組み合いのけんかしてる!」
「なんで?」みんな、突然のことに、驚き、友だちのあとを追った。
身長も高くガタイのいい新ちゃんとかわいい感じの大田君が、狭い廊下で、四つに組んだまま、睨み合っていた。
「どうしたの?」と2人の男子の友人である明美が、中に割って入ろうとした。すると
「新が、抜け駆けしようとした!」と大田君が吐き捨てるように言った。
「スキーから帰ったっら、告ろうって、約束したのに!」
人だかりが、できてしまったので、明美にその場を任せ、私たちは、元の席に戻った。
しばらくすると、明美が私のところにやってきた。
「あのね、2人とも、あんたのことが、好きになっちゃったんだって。告るとか、告らないとか言ってるから、行ってやって!」
「え?」私のことで、喧嘩してたってこと?
私は、二人のところに、急いで戻った。
「けんか、やめて!(あ〜何かの歌にあったなぁ)ね、二人の話、私聞くから…」と、言っているうちに、涙があふれてきてしまった。
女子高育ちの私は、彼氏など縁もなく…それがいきなり、このシチュエーションである。
私の涙を見て、お互いに、気が抜けてしまったのか
「ごめんね」「ごめんね、ホントに…」とひたすら謝り始めた。
私も、ポロポロ泣きながら、「うん、うん」とうなずくだけだった。
「俺たち二人とも、君のことが、好きになっちゃったんだ」と、新ちゃんが言った。
「返事は急がないから、考えてみてくれる?」と言われ、「うん、うん」と、はらはら泣いた。
翌日の夕方、スキーバスは、帰りの帰途に着いた。
何とも言えない雰囲気の私たちだった。
板を割った博美は、ますます不機嫌そうな様子だった。
私はといえば、行きのバスとは大違い。
一番後ろの席に座り、左右に新ちゃんと大田君が座るという状態。ちょっと気が重かった。
これは、寝たふりを決め込もうと、しばらく三人で話していたところ、「眠り」に着いた。
私が寝てしまったと思った二人は、聞くのも恥ずかしい、私の褒め言葉を言い合っていた。
そんな時、母の言葉が頭に浮かんだ。
「大学言っている人がいいよ…」と。そっかぁ…だとしたら、がっちり、ひっぱて行ってくれる社会人の新ちゃんではなく、大学で、設計の勉強をしている大田君がいいのかな?
お父さんと似ている仕事だしなぁ…私は、ファザコンなのかな?
そう思いながら、大田君の、ちょっと低い肩に、そっと頭を乗せてみた。
びくっとしながらも、「よっしゃ」と、小さい声で呟くのが聞こえた。